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役立つメモ

国際税務の基礎(その3)

1.進出別の形態と業務内容

(1)駐在員事務所
現地での情報収集・市場調査、広告宣伝等(受注は出来ない)日本本社の補助的な業務
(2)支店(工場)
営業活動を行う拠点。生産拠点の場合は工場となるが、税務上の扱いは支店と同じ。
(3)子会社
営業拠点、生産拠点、現地法人として活動

進出形態は進出先の法律により規制があるため、進出前に規制を検討する。

2.進出形態と税務

(1)駐在員事務所
恒久的施設には該当しないため、原則として課税なし。
滞在者の源泉税(納税義務)に関してはケースバイケースで検討する(基本的に183日以上滞在で居住者となり、滞在者に課税されるケースが多い)。
(2)支店(工場)
①所得計算
支店の所得計算を行い、現地での申告納税が必要。
支店の所得は日本において合算し、現地で支払った税金は日本本社の外国税額控除の対象となる。
*)計算上の留意点
支店の所得計算は支店を独立起業とみなして計算することが原則となる(独立起業の原則)。このことから、租税条約や現地法の規定で、本支店間の収益の配分や費用の付け替え等が認められないこともある。支店進出前に現地法と租税条約を確認することが必要。
(インドでは本社に対する特許料の支払い、管理業務の報酬を支払うことを認めない)。
②外国税額控除
日本は全世界所得で課税される。日本で課税される税額から、海外支店で課税された税額を控除する。(全世界所得がプラスという前提がある)。
全世界所得がマイナスの場合、日本での課税なし⇒外国税額控除の適用は無い。
ただし、現地の税金が発生してから3年間は日本での控除が認められる(控除額の繰越制度がある)。

(3)子会社
現地法人として課税される。
親子会社間取引については、契約書等の整備が必要。
親子会社間の費用の負担関係は便益を受ける方が負担するという原則がある(子会社が立ちあげ途上という理由で親会社がすべて費用を負担できるわけでは無い)。
*)設立時の費用に関しての争いが多いので注意。
設立の意思決定までの費用は親会社(現地調査、設立形態のコンサル費用など)
子会社を具体的に設立するための費用は子会社負担(設立時の資本金は、設立コスト+当面の運転資金(貸付でも良い)とするのが合理的)。

3、恒久的施設(Permanent Establishment:PE)の問題

(1)駐在員事務所は恒久的施設では無い?
原則としてPEではない。
ただし、収益獲得活動(収益獲得に貢献する活動)を行った場合、支店とみなされ、課税される。
PEの認定は現地国の課税慣習に依るところが多く、一概に判定できないが、駐在員事務所の場合は、情報収集等の補助活動のみということを証明できるように、現地から本社向けの報告書等を作成し備置しておくことが必要。
*)インドや中国は駐在員事務所も税務調査の対象とされ、PEの定義を広く解釈している傾向にある(PEと認定されやすい)。

(2)支店とみなしPE

(1)外注先がPEとなるケースもある。
支店はPEというのは原則。
外注先が日本の法人の販売活動を補助したことから、この外注先を支店(みなしPE)と認定するケースがある。このようなケースをみなしPEという(日本法人に現地での納税義務が生じる)。
海外のエージェントなどもみなしPEとされるリスクはある。
PEと認定されないために、外注先はあくまでもデリバリーの経由点という形が必要(在庫の保管引き渡しのみならばPEと認定されるリスクは低い)。

(2)子会社がみなしPE
親会社からの出向者が、親子間の業務契約を超えた、本来、親会社が行う業務を行ったことから親会社の支店とみなされたケースがある(日本法人に現地での納税義務が生じる)。
*)例:子会社はメンテナンス業務専門の会社である。メンテナンス業務とともに、親会社の指揮監督の下で製品の販売を行ったケース(メンテナンス不能品を引き取って新品を売っていた)。
親子会社間の契約では、子会社は現地国のメンテナンス業務のみ行う契約になっていた(販売代理店契約は含まれていないとして、みなしPEと認定された。
委託業務の範囲を超えた業務を行ってしまうことは、PEと認定される可能性がある。

(3)滞在日数でのPE
日中租税協定に留意すること。
日中租税協定(租税条約)では、6ヶ月以上、日本の法人が中国に従業員を派遣し、コンサルティング業務を提供する場合には、日本法人が中国に恒久的施設を有するものとされます。
(従業員の出向でもPEとみなされるので注意)。
*)出向のケースは、中国と日本の認識の違いから生じる(協定の意図を超えて・・・)。
中国では親会社の従業員が子会社の業務指導を行っていることをコンサルティングとみなしている。出向して子会社に技術指導をするケースなども要注意。収益は子会社が負担する親会社へ支払う技術指導料、コストは親会社の従業員の給与等として所得計算される。場合によっては外国税額控除を受けられないケースもある。
いずれにしても中国での技術指導などに関しては要注意!

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