内部統制には経営者の倫理が必要-内部統制の限界-
昨今、不適切な会計の問題が世間を騒がせました。この問題を、内部統制という観点で見てみます。
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下“基準”と称します)によると、
”内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動 に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な 保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロ セスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング (監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。”
です。
基準は、さらに、“内部統制の目的を達成するため、経営者は、内部統制の基本的要素が組み込まれた プロセスを整備し、そのプロセスを適切に運用していく必要がある。”としています。
内部統制とは、経営者が整備し組織内のすべての人が運用するプロセスなのです。
問題になった、不適切会計は、すべて経営者が業績達成のために指示し、実行されたものです。経営者が不正会計の実行者ではないかもしれませんが、業績達成のために多大なプレッシャーを組織内にかけたことは否めません。このコラムの主旨は、不適切会計の責任が誰にあるかという問題を述べるものではありません。内部統制は元々、不適切会計には弱い構造があることを述べようと思います。この、弱さ故に不正会計が行われる余地があり、それは問題となった会社だけに起こるものではないことを述べたいと思います。
基準の「3.内部統制の限界」は、
(4) 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。
としています。これは、内部統制は経営者が整備し、組織内で運営されるシステムであることから、経営者が内部統制の目的を逸脱する、逸脱せざるを得ない行動をとれば、内部統制そのものは有効でなくなる。ということです。
内部統制が構築されているから大丈夫ではありません。一部の学者さんや専門家は内部統制万能のような議論をすることがありますが、内部統制には大きな限界があります。それは、経営者の行動次第で内部統制は無効になると言うことです。内部統制を支えているものは、経営者の倫理なのです。今回の不適切会計を契機に、内部統制のあるべき姿を考えることが必要と考えます。