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「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリスト(その2)

チェックリストの各項目の意義、(その2)として、金銭債権以外のその他資産について、各チェック項目の確認事項の背景にある会社法の計算規則などを示します(下記表)。

今回のコラムでは、「中小企業の会計に関する指針」は一般に公正妥当と認められる会計基準ではない。ということを述べたいと思います。「中小企業の会計に関する指針」の【総論】目的3.本指針の目的にあるとおり、
(「中小企業の会計に関する指針は」 http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/0-1-0-2-20140203.pdf です。)

「本指針は、中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものである。このため、中小企業は、本指針に拠り計算書類を作成することが推奨される。」

とされている。「拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すもの」であって、会計基準のように、「拠らなければならない」としたものではない。このことから、“一般に公正妥当と認められる会計基準”ではない。では何故この指針に拠ることが望ましいのか?【総論】本指針作成にあたっての方針、にあるとおり、

・企業の規模に関係なく、取引の経済実態が同じなら会計処理も同じになるべきである。しかし、専ら中小企業のための規範として活用するため、コスト・ベネフィットの観点から、会計処理の簡便化や法人税法で規定する処理の適用が、一定の場合には認められる。

・会計情報に期待される役割として経営管理に資する意義も大きいことから、会計情報を適時・正確に作成することが重要である。

ということです。平たくいうと、
“中小企業においても、同じ経済実態の取引は会計処理は同じになるべきであるので、そのためのモデル(規範)としてこの指針があり、この指針に拠って多くの中小企業が決算書を作成することで、会計情報としての有用性と比較可能性が保たれる”、ということでしょうね。

本来、会計基準は拠らねばならない、という強制適用が必要なものですが、この指針では、下記表、チェックリストNo 14の市場価格のあるその他有価証券の評価のように、多額であるか否かで判断する、緩やかな適用が可能な規定があります。このような緩やかな適用は会計基準では認められません。このような緩やかな適用を認めていることから、一般に公正妥当と認められる会計基準、とは一線を画したものと理解して下さい。
とはいえ、指針の作成方針にもあるとおり、中小企業の会計の規範としては有意義な指針だと思いますので、皆さん、積極的に指針をご活用下さい。

勘定科目

確認事項

有価証券

12

有価証券がある場合、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式、その他有価証券に区分して評価されているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第74条3項1号へ、第74条3項4号イ)。

13

売買目的有価証券がある場合、時価が貸借対照表価額とされ、評価差額は 営業外損益とされているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条6項2号)企業会計原則(第2損益計算書原則 四営業外損益)。

14

市場価格のあるその他有価証券を保有する場合、それが多額であるか否かによって適正に処理されているか。

(確認事項の意義)

中小企業の会計に関する指針のみの規定(企業会計原則の例外)。

15

時価が取得原価より著しく下落し、かつ回復の見込みがない市場価格のある有価証券(売買目的有価証券を除く。)を保有する場合、それが時価で評価され、評価差額は特別損失に計上されているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条 3項1号、6項2号)。

16

その発行会社の財政状態が著しく悪化した市場価格のない株式を保有する 場合、それについて相当の減額がなされ、評価差額は当期の損失として処理 されているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条 3項1号、6項1号)。

棚卸資産

17

棚卸資産がある場合、原則として、取得原価で計上されているか。

(確認事項の意義)

取得原価主義。会社計算規則(第5条1項)

18

棚卸資産について、災害による著しい損傷、著しい陳腐化その他これらに準ずる特別の事実が生じた場合、その事実を反映させて帳簿価額が切り下げら れているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条3項1号)。企業会計原則(貸借対照表原則五A)

19

棚卸資産の期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ金額的重要性 がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とされているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条3項1号)。企業会計原則(貸借対照表原則五A)

20

最終仕入原価法により評価している棚卸資産がある場合、期間損益計算上著しい弊害がないことが確認されているか。

(確認事項の意義)

企業会計原則(注21)に最終仕入原価法は認めていない。税法との均衡を図るための考え方(連続意見書第4 「棚卸資産の評価について」)

経過勘定等

21

前払費用と前払金、前受収益と前受金、未払費用と未払金、未収収益と未収金は、それぞれ区別され、適正に処理されているか。

22

立替金、仮払金、仮受金等の項目のうち、金額の重要なもの又は当期の費用又は収益とすべきものがある場合、適正に処理されているか。

(確認事項の意義)

企業会計原則(注5 経過勘定について)。

固定資産

23

固定資産がある場合、原則として、取得原価で計上されているか。

(確認事項の意義)

取得原価主義。会社計算規則(第5条1項)

24

減価償却は経営状況などにより任意に行うことなく、継続して規則的な償却が行われているか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条2項)。

25

適用した耐用年数等が著しく不合理となった固定資産がある場合、耐用年数 又は残存価額が修正され、これに基づいて過年度の減価償却累計額が修正され、修正額が特別損失に計上されているか。

(確認事項の意義)

連続意見書第3。減価償却に関する当面の監査上の取扱(Ⅱ正規の減価償却)。

26

予測することができない減損が生じた固定資産がある場合、相当の減額がなされているか。

27

使用状況に大幅な変更があった固定資産がある場合、減損の可能性について検討されたか。

(確認事項の意義)

会社計算規則(第5条3項2号)。固定資産の減損に関する会計基準。

 

28

研究開発に該当するソフトウェア制作費がある場合、研究開発費として費用処理されているか。

29

研究開発に該当しない社内利用のソフトウェア制作費がある場合、無形固定資産に計上されているか。

(確認事項の意義)

研究開発費等に関する会計基準。会社計算規則(第74条3項3号チ)。

繰延資産

30

繰延資産として計上された費用がある場合、当期の償却が適正になされているか。

31

税法固有の繰延資産は、投資その他の資産の部に長期前払費用等として計上され、支出の効果の及ぶ期間で償却が行われているか。

(確認事項の意義)

企業会計原則(貸借対照表原則四(一)C)

 

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